物損事故の賠償

物損事故の賠償

交通事故は、人身事故と物損事故の大きく2つに分かれます。
ここでは物損事故について説明します。
物損事故は、過失建造物損壊罪(道交法116条)が適用されるケースを除いては、
刑事上の責任が問われないことから、捜査が行われること はありません。
したがって、被害者が刑事記録を閲覧することは不可能ですので、
事故現場の状況は、被害者自身で記録しておくことが必要になります。
また自賠責保険が補償するのは人的損害のみであり、物損事故によって生じた損害は、
原則として補償されません(自賠法11条・16条・3条)。
よって、賠償を受けるためには、被害者自身で加害者側の保険会社に
請求しなければならないのです。

車両修理費用

交通事故で車両が破損した場合、原則として、事故車両の修理費相当額が損害として
認められます。
これは「修理の内容と費用が相当と認められる場合」という意味です。
よって、たとえば板金修理で足りるところをあえてパネル交換したり、
部分塗装で足りるところをあ えて全塗装したりしても、
あくまで板金修理費用や部分塗装費用までしか損害として認められませんし、
修理内容が相当でも修理費用が不当に高額である場合には、
相当額を超える費用は損害として認められません。

全損

車両の損傷が、物理的に修理不能である場合、そして修理費用が当該車両の
事故直前の時価(+買替諸費用)以上にかかってしまう場合は、
その時価(+買替諸費用)が相当額とされます。後者は「経済的全損」と呼ばれます。

新車の賠償

裁判所の判例の傾向は「購入後3ヶ月以内・走行3,000km以内で車両の主たる
構造装置に致命的な損傷を受けた場合に限って新車賠償を認める。」という、
事実上新車賠償を否定する厳しいものです。
実際、新車賠償を認めた判決はありません。
昭和62年1月30日の大阪地裁判決は、納車30分後に追突された新車に対してさえ、
新車賠償を認めませんでした。現実問題として、新車の賠償を受けるのは
ほぼ不可能といえます。

代車の費用

被害者にも過失があった場合に、保険会社が「過失事案のため代車はダメ」
といってくることがあります。
けれども、これは明らかにおかしい話です。
「過失」は事故の原因であり、「損害」は事故の結果生じるものです。
原因に関与したからといって、「損害」自体が小さくなるはずがありません。
この2つは無関係です。
被害者は、「車両の修理費用」「事故による格落ち」「代車料」などの損害ついて、
正当な請求根拠があれば、当然に請求できるのです。
これらの損害額のうち、どの程度を相手方に負担させるのかを決めるのが
「過失割合」です。
また「代車は仕事で使用する車なら認めますが、マイカーはダメです」なんて
いわれることもあります。
その際は、「マイカーを理由に代車の提供を否定する理由がわかりません。
裁判例があるのなら、ぜひ教えてください」と訊いてみましょう。
被害者に代車を必要とする合理的な理由があれば、代車は請求も提供も可能なのです。
たとえば郊外に住み、最寄の駅まで夫や子供の送り迎えをしている主婦であれば、
充分に合理的な理由となります。
ただし代車が認められる期間は「修理期間+α」
あるいは「買い替え期間(通常は1ヶ月程度)+α」」とされます。
この期間を過ぎると自己負担になってしまう可能性があるので、留意して下さい。

車両格落ち損害

「評価損」とも呼ばれますが、「修理を行っても修理技術の限界から
完全に原状回復できないがために発生する損害」のことです。

ただ率直にいって、保険会社は、修理により性能や外観は元に戻っているとして、
格落ち損害をめったに認めない傾向があります。
ですから、請求するにあたっては、客観的な証拠をもって挑まねばなりません。
例えば、『財団法人 日本自動車査定協会』にて査定を受け、「事故減価額証明書」を
証拠とする方法もあるのですが、ほとんどの判例では「修理額の数十%」が評価損の程度と判断されています。
ただし、購入して間もないこと、車両価格が高価であることなどが条件となります。
まず『財団法人 日本自動車査定協会』にて査定を受け、「事故減価額証明書」を取り付けましょう。

休車損害

事故によって使用不能となった車両を、営業車として使用していた場合
(タクシー・バス・トラックなど)、当該車両の修理期間または買換に
必要な期間は、営業を休まざるを得ません。
当然、休んだ分だけ営業利益が減少することになりますから、
その減少した利益は損害として認められます。
休車損害は「当該車両を使用したことによって得た営業収入」から、
「休業したことによって支出を免れた経費」を差し引き、
これに休車期間を乗じて算定します。
経費として控除されるものとしては、燃料代や有料道路代金等が挙げられます。
【休車損害】=【日額基礎収入=(収入―経費)】×【休業期間】
もっとも、当該車両の代わりに代車を使用していた場合には、
代車使用料が損害となります。休車損害と二重で請求することはできません。
また保有する遊休車両を使用することで、稼動状況を維持できた場合などでは、
休車損害が一定割合減額されたり、認められない場合もあります。

雑費

交通事故により車両が損傷すると、その処理だけでさまざまな費用を
支出することになります。
これらの雑費についても、事故と相当因果関係が認められるものであれば、
損害として認められますから、漏れなく請求しましょう。
これまでに認められた雑費用としては、
車両保管料・レッカー代・時価査定料・通信費・交通事故証明書交付手数料・
廃車料などがあります。

車両積載物

事故によって、車両に積載していた動産や車両の装備品が損傷した場合には、
事故との相当因果関係が認められれば、修理費用や価値相当額が損害として認められます。
裁判例では、装備品であるパーツ、チャイルドシート、カーナビ及びテレビの他、
積載物であるノートパソコンや壷につき、損害を認めたものがあります。
但し、実際に事故で壊れたことを証明することはとても難しいですので、
事故直後から保険会社へアピールすることが大切です。
それにもし損害として認められたとしても、時価で評価されますので、
ものすごく損をしたように感じてしまうことが多いようです。